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Fig-10 Example of breakwater

ら100m程度以上離れていると、岩場の全体形状が把握され、岩場としての輪郭と水際線の形状が重要となる。
このように、主な視点場を中心にとらえて、その空間をどのように演出し、擬岩をデザインするか決定する。例えば視点場からの距離が遠い場合、岩肌の細かい表現は必要ないとして省略することも可能であり、その方が経済的となる。ただし、主な視点場が遠くても、極く近くまでアクセス可能な構造物では、近づいた人の期待を裏切らないためにも、表面テクスチャーの詳細まで表現しておいたほうが良い。
以上に示してきたように、構造物に塗料を塗布したり、タイルを張ったりする修景方法に比べて、擬岩は全体形状まで変更していくので、景観デザインの枠が広がることになる。しかしながら、構造物個々のデザインのみを検討しているのでは、景観対策としては不十分であろう。個々にデザインコンセプトが異なると、周辺との調和をとったとしても、違和感は出てくるので、地域全体のデザインコンセプトの設定が重要である。地域を調査し、そこの地域性を把握した上でデザイン目標を設定する。そして、目標に合致した構造物を設計・施工することが景観対策として重要な課題であろう。
5. おわりに
環境との共生、自然との調和という観点で、生物と港湾・漁港構造物の関係、構造物への藻場造成の方法および擬岩工法による構造物の修景について個別にまとめた、現段階では、それぞれが緒に付いたばかりの異なる技術である。しかしながら、環境との共生を考えた場合、生態系と景観は分けて扱うものでもなく、それぞれ相互に絡み合ってくるものであり、今後、ますますそのような視点での技術開発が必要と考えられる。
なお、前半の波浪および構造形式と付着生物に関する研究は、港湾技術研究所、五洋建設、エコーとの共同研究であり、ここに記すと共に、港湾技術研究所の小笹博昭氏。村上和男氏、浅井正氏の各位に深謝の意を表する。

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Fig-11 Example of sign of artificial reef

参考文献

1)運輸省港湾局(1994);環境と共生する港湾−エコポート−、新たな港湾環境政策、大蔵省印刷局発行。
2)小笹、室、中瀬、綿貫、山本(1994);生物にやさしい港湾構造物の研究−波浪条件および港湾構造物形式からみた生物付着群集−、海岸工学論文集、Vol. 41。
3)小笹、村上。浅井、中瀬、綿貫、山本(1995);多用度指数を用いた波高・港湾構造物形式別の付着生物群集の評価、海岸工学論文集、Vol. 42。
4)Watanuki, A & Yamamoto. H. (1990): Settlement of seaweeds on coastal structures, Hydrobiologia 204/205.
5)Foster, M. S. (1975): Regulation of algal community development in a Macrocstis pyrifera forest. Mar. Biol. 32.
6)寺脇利信(1991);砂地海底に設置したコンクリートブロック上での大型海藻カジメの生育、海洋開発論文集、Vol. 7.
7)Chapman A. R. O. (1981):海藻の生物学、共立出版。
8)綿貫、北尾、井出、下山(1996);緩効性藻類増殖材を用いた付着珪藻の増殖、平成8年度日本水産工学会学術講演会。
9)寺脇、新井、川崎(1995);藻場の分布の制限要因を考慮した造成方法、水産工学、Vol. 32, No.2。

 

 

 

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